法律関係をめぐる現状

ここまで書いてきた通り、温泉に関しては法律等で様々なことが規定されています。では現実の運用状況についてはどうでしょうか。

これは実際に多くの施設を訪れての感想ですが、これを守っていない入浴施設はたくさんあります。以前温泉偽装問題なんて事件もありましたが、成分をごまかされているかどうかは、いろんな温泉に入ってかなり経験を積まないと判定が難しいです。素人目にもわかるものは、分析書にかかわるものです。

一番多いのは分析日が古すぎるというものです。

温泉法十八条3
温泉を公共の浴用又は飲用に供する者は、政令で定める期間ごとに前項の温泉成分分析を受け、その結果についての通知を受けた日から起算して三十日以内に、当該結果に基づき、第一項の規定による掲示の内容を変更しなければならない。

「政令で定める期間」は2016年現在、10年です。つまり10年も経ったら成分も変わっている可能性があるから再分析してね、ということですが、大体1-2割くらいの施設は古い分析書のままです。なかには60年も前の分析書を掲げていたり、そもそも一度も分析をしていないのではと思われる施設もあります(そのような施設は当然記事が書けないので当サイトにも載っていません。明らかな名湯もあるので勿体ない…)。別に積極的に摘発とかする気はないですが、温泉と銘打って運営している以上、ちゃんと分析してほしいものです。温泉ソムリエ資格の普及で、ちゃんと分析書読める人は増えてますしね。まあ分析も1回10万円以上かかるらしいので、そう簡単には、というのもわからなくはないですが(でも年1万円と考えればそれぐらいは)…というか違法操業ですから
ちなみに新しい分析書があれば、古い分析書を並べて掲示するのはアリです。こういうのは成分の変遷がわかって面白いです。

あとは掲示場所がわかりづらすぎるというのもあります。

温泉法第18条
温泉を公共の浴用又は飲用に供する者は、施設内の見やすい場所に、環境省令で定めるところにより、次に掲げる事項を掲示しなければならない。
一 温泉の成分
二 禁忌症
三 入浴または飲用上の注意
四 前三号に掲げるもののほか、入浴又は飲用上必要な情報として環境省令で定めるもの

分析書といえば脱衣場に掲示されるのが一般的です。しかし番台の奥深くに隠すように貼ってあったり、分析はされているのに肝心の成分表の部分が掲示されていなかったり、なぜか男湯になく女湯にのみ掲示されていたり、いろんな事例を見てきました。せっかくお金を払って分析していても、入浴者に見えなかったら分析していないのと同じです。

まあ分析する側も問題あったりするんですけどね。分析書の計算間違いとか、意外とありますから。当サイトでは質量の欄に記載された値(mg)を正しいと仮定して、ミリバルの値など全部計算しなおしています。

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